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終わっちゃいましたね。

神社のルーツ

本エントリは本が好き!にて献本いただいた下記の本についての書評です。


〔新書〕神社のルーツ
livedoor BOOKSで購入
書評データ

私の実家は西宮にあるので、昔、西宮神社えべっさん」に何回か参ったことがある。阪神西宮駅付近で売っていた今川焼の名前が「えびす焼き」という名前だったため、それが実は今川焼と呼ばれることを高校に入るぐらいまで知らなかった。

そんなことはどうでもいいのだが、日本中にかなりたくさんの神社があり、例えば自分が悩み事等の、心中があまりよろしくない状態で歩いているとき、ふと神社が目に付いたら、ちょっと立ち寄ってお賽銭を入れ拝む、というのは特に変わった行動ではないと思うのだが、その神社が何を祀っており、その起源は何なのか? などと考えることは無かった。

本書を読むと、さまざまな神社の起源において、複数の信仰が対立するのではなく、融合した結果、現在の形となったものが少なくないそうだ、というか、大きな神社というのは大概そうらしい。信仰に対して「1+1=2」的な考え方ができるというのはすばらしいと思うのだが、そういう文化のある国に生まれたことは幸せなのだろうと思う。また、初めて知ったのだが、人神という「人が死んで神になる」という概念は日本独特なものなのだそうだ。

というわけで、たくさんの神社について丁寧に起源を調査し、分類し、整理された著者の戸部さんに敬意を表したい。

ちなみに★は4つにさせていただいた。マイナス★1つ分は、単純に読み物としてのエンターテイメント性に欠ける感があること。これは本書のポジションから考えると言いがかりのような気もするが、神社に興味の無い人が読んで面白い本かと聞かれるとイエスとは言いがたい。しかしそれは私の主観であり、もしかしたら「全然興味なかったけど読んでみたらいろいろ知りたくなってきた」と思う人がいるかもしれない。そういう可能性のある丁寧な本だとは感じる。あと『血統から探る「神様ネットワーク」』と銘打っているのなら、図でネットワークを示してくれるとうれしいかったかな、とは思った。

自分が幼いころお祭りで遊びに行ったあの神社が何を祀っており、その起源が何なのかを知ることは、自分の人生をちょっと豊かにしてくれることだと思う。

エビス(夷)とは、異郷からやってくる存在のことである。古来、日本では神が海の彼方からやってくるという観念があった。そういう神を来訪神というが、海辺に暮らし、海を生業とする人々は、海中から出現する神あるいは海から漂着する神をエビスと呼んだ。漁民たちは、海から寄り来るエビスを豊漁や海上の安全を保証し、豊かさと幸福をもたらす神として大事に祀ったのである。

p.37 「西宮(恵比寿)系 − 信仰のルーツ」より